熱傷面積(%BSA)|知っておきたい臨床で使う指標[15]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

 

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

熱傷面積(Body Surface Area;%BSA)

 

熱傷面積を出す際、一般的によく使われる測定法は、①9の法則、②5の法則、③手掌法、④Lund & Browderの法則があります。
9の法則、5の法則および手掌法は簡易法であり、Lund & Browderの法則は最も正確な方法とされています。また、小児や成人によってそれぞれの算出方法が違う場合もあります。

 

〈目次〉

 


 

熱傷面積の算出方法

 

9の法則_5の法則_手掌法_Lund & Browderの法則_熱傷面積_%BSA_Body Surface Area

 

文献13より改変

 

熱傷面積を主に使う場所と使用する診療科

9の法則、5の法則および手掌法といった簡易法は、救急隊による現場での評価や救急外来での初期評価として使用されます。Lund & Browderの法則は初期評価と初期治療が行われ、落ち着いたところで全身管理の指標や外科的治療の判断をするために使用されます。

 

従って、9の法則、5の法則および手掌法といった簡易法は、救急隊員や救急救命士、医師、看護師が使用し、Lund & Browderの法則は救急専門医や形成外科医など主に熱傷治療を専門に行う医師が使用すると考えて良いでしょう。

 

熱傷面積で何がわかる?

皮膚は、外部からの刺激を守るクッションの役割を担ったり、体内の水分が失われるのを防いだり、体温の調整を行うなど、たくさんの非常に重要な役割を担っています。熱傷は、そういった皮膚に損傷を及ぼすもので、皮膚が広範囲に損傷を受けると、体内の均衡が崩れてしまい、正常な営みを維持することができなくなります。また、皮膚という防壁が機能しなくなることで感染の危険性も一気に増加します。

 

そのため、熱傷患者さんは面積と広さで重症度判定し、その重症度に合った治療を素早く行わなくてはなりません。熱傷患者さんが、皮膚の損傷をどれくらいの範囲で受けているかを知ることは非常に重要なのです。

 

memo“%BSA”は「Body Surface Area」の略

熱傷面積のことを%BSAと表現します。BSAは、Body Surface Areaの略語で、Burn Surface Areaではないことを知っておいてください。

 

熱傷面積をどう使う?

熱傷面積は、基本的に、熱傷によりどれくらいの範囲の皮膚に損傷が起きたのかを、以下の法則に則って加算して面積を求めます。

 

9の法則

身体の区画をすべて9の倍数で評価する方法です(陰部除く)。主として成人の熱傷面積を評価するときに使用されます。
首から顔、頭を9%(顔面だけ、もしくは頭部だけの場合は4.5%)、上肢を9%、下肢を18%(片足9%×2、もしくは前面9%・後面9%、下腿で9%・大腿で9%)、体幹を18%(前面9%・後面9%、もしくは前胸部9%・腹部9%、胸背部9%・腰背部殿部9%)とし、陰部を1%と定義しています。

 

5の法則

身体の区画をすべて5の倍数で評価する方法です。主として身体に比して頭が大きい幼児や小児の熱傷面積を評価するときに使用されます。首から顔、頭を幼児では20、小児では15,成人では5としているのが特徴です。

 

手掌法

比較的熱傷面積が狭い時や、狭い範囲の熱傷が複数カ所に存在している時に使用します。患者さんの手掌部(手首から指全体)を、概ね体表面積の1%として算定する方法で、基本的には成人で使用します。

 

Lund & Browderの法則

9の法則や5の法則よりも身体の部位をより細かく区分し、かつ年齢に応じて評価する方法です。最も正確に熱傷面積を算定することができますが、9の法則や5の法則と比べると算定に時間がかかります。

 

熱傷面積の算出方法を実際に使ってみよう

症例1

 

68歳の男性。自宅の火災で受傷して救急搬送された。頸部から顔面(頭部を除く)、両上肢前面および前胸部に熱傷が見られる(以下の図参照)。この患者の熱傷面積を9の法則を用いて算定するといくつになる?

 

答え:22.5%

頸部から顔面、頭部全体で9%なので頭部を除くとおよそ半分の4.5%。
上肢1本(前面・後面)が9%で、前面だけだと1本4.5%のため、両上肢前面だと9%。
前胸部は9%。
以上から、合計は4.5+9+9=22.5%となる。

 

→熱傷面積の算出方法を確認

 

症例2

 

1歳の男児。熱湯を頭から被って受傷した。頸部から顔面および頭部全体と両下肢全体に熱傷が見られる(以下の図参照)。この患者の熱傷面積を9の法則と5の法則、およびLund & Browderの法則を用いてそれぞれ算定するといくつになる?

 

答え:9の法則45% 5の法則40% Lund & Browderの法則33%

【9の法則の場合】
頸部から顔面および頭部全体で9%。
一方の下肢全体で9+9=18%なので両下肢だと18+18=36%。
以上から、合計は9+36=45%となる。

 

【5の法則の場合】
頸部から顔面および頭部全体で20%。
一方の下肢全体で10%。両下肢だと10+10=20%。
以上から、合計は20+20=40%となる。

 

【Lund & Browderの法則の場合】
頸部から顔面および頭部全体で1.0+8.5+8.5=18%。
一方の下肢全体で3.25+2.5+1.75=7.5%。両下肢だと7.5+7.5=15%。
以上から、合計は18+15=33%となる。

 

同じ熱傷でも9の法則では45%、5の法則だと40%、Lund & Browderの法則だと33%と測定法で大きな差が出る。成人ではいずれの算定法でも大きな差は出ないが、幼児では成人に比して頭部の全体に占める割合が多いことと、下肢の全体に占める割合が少ないことが大きな差が生じる理由として挙げられる。

 

→熱傷面積の算出方法を確認

 

症例3

 

19歳の男性。バーベキューをしていて火が服に燃え移って受傷した。顔面、右手から前腕、左手から前腕、上腕および右大腿前面にかけて熱傷がみられる(以下の図参照)。この患者の熱傷面積をLund & Browderの法則を用いて算定するといくつになる?

 

答え:23.25%

まず顔面に熱傷があるのでAは頭部の1/2で3.5%。
右手から前腕では右手が表裏で1.25×2=2.5、前腕の表裏で1.5×2=3なので、2.5+3=5.5%
左手から前腕、上腕も同様に1.25×2=2.5、1.5×2=3、2×2=4なので、2.5+3+4=9.5%
右大腿前面は4.75%なので、全体の熱傷面積は3.5+5.5+9.5+4.75=23.25%となる。

 

ちなみに、9の法則を用いると、4.5(顔面)+4.5(右手)+9(左手)+4.5(右大腿前面)となるので熱傷面積は22.5%となり、ほぼ同じである。

 

→熱傷面積の算出方法を確認

 

※編集部註※

当記事は公開時点で、症例2のLund & Browderの法則の算定に頸部が含まれておらず、合計のパーセンテージが誤っておりました。

2024年11月27日に、正しい情報に修正しました。修正の上、お詫び申し上げます。

(誤)Lund & Browderの法則32%

(正)Lund & Browderの法則33%

 


[文 献]

 

  • (1)Wallance AB,et al.The exposure treatment of burns.Lancet.257.1951,501-4.
  • (2)Blocker TG.Local and general treatment of acute extensive burns.The open-air régime.Lancet 257.1951,498-501.
  • (3)Lund CC,et al.The estimation of area of burns.SGO.79.1944,352-8.

 


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